好きなもの好きだと言えた日


元々小学校低学年くらいから漫画が好きでコレクター基質なこともあって、ほぼ毎月コミックスを買う生活をかれこれ中学生の頃から5年以上続けていることになる。アニメは好きな漫画がアニメ化されたら観るくらい。


だったのが大学受験の時に変わった。それなりの進学校に通っていたので部活を引退してから勉強漬けの日々になり、友達を遊びに誘うことなんてできなかった。でも、気分転換がしたい!そこでたどり着いたのがアニメだった。30分弱で終わるし、自分のペースで見られる!某テニスのアニメに興味を持った時「これに手を出したら何か新しい扉を開いてしまう気がする」とビビって家族に何度も言っていたのを今でも思い出す。結局ハマって漫画をそろえ、CDも何枚か購入した。その後某水泳アニメにハマって見事ヲタクの仲間入り(ヲタクの仲間入りって何)、アニメイトデビューもしました(アニメイトデビューって何)。


大学に入り、ヲタクの友達出来ればいいな~とか考えてたけれど、大学受験の途中でヲタク足を突っ込み出したものだから、そもそも友達にヲタクをカミングアウトする方法もわからないし、ゼロから友達になるとき「ヲタクで~す!」とも言えるほどのメンタル持ち合わせてないし、結局ヲタクを隠して友達をつくった。その後軽くは「私ヲタクなんだよね」って2人くらいには言えたけど。


大学1年の夏、IDOLiSH7が配信された。種村有菜さんの「原案を担当しました」というツイートが流れてきて、声優さんも知っている方の名前を見かけたので興味をもって、人生初のアプリゲームに事前登録をした。この時も「このゲームをしたら新しい扉を開いてしまう」とビビって家族に言った記憶がある。これ以上ヲタクになるのが怖かった。どう考えても私はそういうカルチャーがすきな傾向にあると、大学受験中から大学1年の夏の短い間に摂取したアニメや漫画の量で感じていた。これ以上深い沼にハマってしまったら、また人に言えない「すき」が増えてしまうということに恐怖を感じていた。


結局そのまま私はまんまとIDOLiSH7にハマった。それはもう深く、今までになく深くハマった。これが沼に落ちると言うことが。それまでは多分聞いたことがあったけれど右から左へ通り抜けていた二次創作、同人誌、コミケなどの単語が、全てキャッチされるようになった。そこでTwitterのリア垢で大神万理さんや種村有菜さん、絵師さんのアカウントをフォローすることでリアルの友人にヲタバレすることが怖くなり(そう滅多にわざわざ人のフォロー欄を見る人もいないだろうけど)趣味垢をつくった。


友達には言えない趣味。90%楽しいけれど、10%うしろめたい気持ちになって、時々だけれどなんだか息苦しかった。推しの逢坂壮五くんは「好きなものを好き」って言うことができるようになっていくというのに、その大切さや幸せさを歌にのせて伝えてまでくれたのに、ファンとしてマネージャーとして不甲斐なかった。IDOLiSH7のことが大好きなのに、どうして胸を張って大きな声で「私はIDOLiSH7がすきです」って言えないんだろう。とはいえどうしようもなく、友達に隠しながら私は着々とIDOLiSH7の深みにハマっていき、だんだんとジャンルは大きくなり、アニメ化までして、私はというと大学3年生になって就活が始まった。


そんな折に、事件が起こったのだ。まぁ、内容的には事件なんてそんな物騒なものではないんだけど。ある会社を受けた友達Aと、面接に行った時にどんな人がいたのかという話をしていた時だ。「意識高い系かオタクって感じ。意識高い系とは恐縮しちゃって話せないし、オタクては何を喋ればいいのかわかんない笑笑」と言った。「オタクとは何を喋ればいいのかわかんない笑笑」と言ったのだ。


その瞬間、呼吸が出来なかった。「そうだね」って言って笑い声が渇いたものにならないように気を張った。


辛かった。もう友達Aにヲタクをカミングアウトすることができないと思った。友達Aは、普段よく一緒に行動するグループのうちの1人だった。別にカミングアウトしなくてもいいじゃんっていう考えもあるのだろうけど、私はIDOLiSH7をすきになってから日常で幸福を感じる機会の半分くらいをIDOLiSH7が占めるようになっていて、友達のことがすきだからこそ、自分の幸福を感じる対象について話せないことにうしろめたさや寂しさを感じていた。だからいつか卒業後とかに軽~く「実はゲームとかアニメとかすきなんだよね、イベントとかも行くよ」って言って、私の趣味を理解してくれなくてもいいから、私がそういう趣味をもっていることを受け入れてほしいと思っていた。よく一緒に行動するグループの友達に、一番受け入れてほしいと思っていたけど、友達Aがヲタクを受け入れてくれなさそうと感じた時点で、そのグループの友達にカミングアウトするのは無理だと思った。もう、「いつか」が叶わないと感じたその瞬間がすごく辛かった。


それが今年の3月。それでもやっぱりどうしようもなくて、基本的には楽しい日々を送って、ついに待ちに待ったナナライRoad To Infinityがやってきた、78日。私は2日目のみの参戦だった。


ライブについては書ききれないので割愛するが、とにかく幸福だった。紡ちゃんの言葉を借りるなら「すごいものを見ることができた自分はとても幸せなんだと誇らしい気持ち」になれた(借りるとか言っといてうろ覚えですごめんなさい)。唯一IDOLiSH7の話が出来る妹と行って、それはもうはしゃぎすぎた。


楽しい時間は終わって9日になり、ナナライロスを危惧しながら、天くんと陸くんの12songs giftを聴きながら、ナナライについて賑わうTLを見ながら、電車に揺られて大学に向かった。この高揚感と虚無感をシェアすることができる人が一人もいない空間に通勤ラッシュに揉まれながら向かった。そんな時、3周年ティザー広告についてのツイートを見て、ああ本当に愛のあるコンテンツを好きになれて私は幸せだと思った。多くの方がツイートされていたように、アプリのダウンロードやアニメの2期など宣伝することはたくさんあるはずなのに、私たち既存ファンに「大丈夫だよ これは始まりだよ 続きがあるよ」って教えてくれた。IDOLiSH7は胸を張ってすきだって言える、本当に素敵なコンテンツだと思った。


大学ではいつも通り楽しく過ごした。でも、誰とも話していない時、頭の中では昨日みたアイドルを背負う声優さん達の姿と日付が変わった瞬間ダウンロードした12song giftばかりが流れていた。


昼食の前に、いつも行動するグループではないが仲の良い友達B2人で話していた。友達Bにはなんとなく自分がヲタクであることは軽く言っていて、でも深くIDOLiSH7の話をすることはできない、という関係だった。私がナナライのためにしていたネイルを褒めてくれて、話の流れで日曜日に出かけたことを話してしまったものだから「もしかして、そのお出かけのために?」って聞かれた。


私の気持ちは「まずい」と「話すチャンスかな」の半々だった。結果、午前中抑えていた高揚感と虚無感をシェアしたい気持ちと胸を張ってIDOLiSH7がすきだって言いたい気持ちが勝って、「実は二次元のアイドルがすきで、そのライブに行ってきたの」とついに言った。なんていうか、「ヲタクである」と言うだけと「二次元のアイドルを推すくらいすき」と言うのは重さが違う。いくらヲタクを受け入れてくれている友達Bとはいえ勇気が必要だった。


「え~!素敵じゃん!」


友達Bはそう言ってくれた。すごく嬉しかった。彼女はIDOLiSH7を知らなかったし、なんなら他作品の名前を出そうと思ったらその名前すら間違えるくらいで、二次元のアイドルについては本当に知らないんだと思う。だけど、私のIDOLiSH7を「すき」という気持ちを「素敵」って言ってくれた。「好きなもの好き」って言えた!それだけじゃなく、肯定してもらえた!すごく嬉しかった!


そのままBと話しながら、学食に向かったところ、友達Cが席に座っていた。Cはいつも一緒に行動するグループではあるけれど、絶妙な関係だ。恐れ多くもIDOLiSH7に例えるなら、ACを含めたいつも一緒に行動するグループがIDOLiSH7で、Cと私はMEZZO"という感じ。某推理アニメの映画を一緒に観にいき、某トリプルフェイスについてLINEで長文で語り合うということをしていたので、多分私の趣味に理解があるのではないかと、なんとなく思っていた。思ってはいたものの、踏み出す勇気もタイミングもなくて、できなかったのだけれど。


勇気を出すのは、タイミングは、今だ、と思った。私が恐る恐る「実は私、割と深刻なヲタクなんだ」と言った。Cは「うん」とただ聴いてくれた。「日曜日にね、私のすきな二次元のアイドルのライブに行ってきたの。すごく楽しかったの。でも人に言えないの」そう言うとCは受け入れてくれて「いいじゃん」って言ってくれて、なんと、ライブの話をもっと聴きたいとまで言ってくれた。他の友達に聞こえないよう声を潜めたりしつつ、ライブの話も少し、しちゃったのだ!本当に嬉しい!就活中の身でその他諸々で忙しいので、またご飯に行こうって話して今日は終わったのだけれど、私はとてつもなく幸せだ。すきなものをすきでいいって受け入れてもらえるのってなんて幸せなんだろう!


IDOLiSH7をすきになって本当によかった。胸を張ってすきだって言わなきゃ嘘だと思えるような、素敵で、かっこよくて、楽しくて、粋で、愛に溢れたモノを届けてくれてありがとう。すきを言えない苦しさが呼吸ができないくらいだったけれど、すきを言うことができた今日、羽が生えて飛んでいきそうなくらい嬉しいです。本当に本当に、こんなに嬉しい気持ちにさせてくれてありがとう。IDOLiSH7をずっとずっと胸を張ってすきだって言えるようなファンでありマネージャーであることを誓います。


最後に、友達Aを含めたヲタクをカミングアウト出来ていない友達は、全く悪くなくて、カミングアウト出来ないことに対して辛いという気持ちもあるけれど、一緒に過ごして楽しいという気持ちの方がたくさんあるということを書かせてください。


こんなところまで、長ったらしい一大学生の日記を読んでくれてありがとうございます。